2015年05月01日

【自作小説】臆病者の偶像/著者:赤鈴/エッセイ第二弾

今日も朝が訪れた。絶望しか感じることのできない朝が。陽の光が射しこむ。

枕元で目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。ゆっくりとそれを止める。

しかし、なかなか身体は起き上がろうとはしない。心が拒んでいるのだ。そして、心の中で叫ぶ―

――死にたい

と。

 しかし、私は根っからの小心者だ。臆病者なのだ。

死にたくても死ぬ"勇気"すら持てず、俺はずっと生かされ続けてきた。

――俺は、生きてない

 昔からそうだった。何をするにしても中途半端で、周りからはいつも馬鹿にされてきた。落ちこぼれだった。

小中とイジメられて不登校になり、中学時代なんかはまともな授業を受けたことがない。だから、学もない。そんなんだから高校も馬鹿校にしか行けなかった。

そんな俺でも就職はできるんだから、世の中というものは案外なんとかなるものである。

 そんな俺がうつ病になったのは1年半くらい前のことだった。

今年に入ってからは特に症状が酷い。最近では自律神経失調症まで併発したもんだから厄介な話である。

一時期では、仕事を約1ヶ月という長い休職を初めて経験することになるまでに症状が悪化した。

 この病気の辛いところは"理解されにくい"というところである。

会社の人達は色々気を遣ってくれた、それでも一部の人からは嫌味なことも言われたりした。その度に死にたくなった。

家族にすら病気のことを理解してもらえず、相談できる友人や、彼女もいなかった。

孤独だった。

"退屈は人を殺す"というが、"孤独も人を殺す"と俺は思った。

 着替える服がまるで白装束のように俺には見えた。気分は切腹を申しつけられた侍のような気分だ。いっそのこと誰か俺のこの首をはねてくれ。そう心の中で呟く。

 顔を洗い、うがいをし、うっすら生えた無精ヒゲを剃り、朝食を食べて、出勤する。という恒例の儀式を行ってから車に乗り込み、会社へと向かう。

 自宅から会社までは車で約10分と、近い。それが幸いでもあり、不幸でもあった。

 会社へ着き、仕事を始めると忙しさが全てを忘れさせてくれた。何かを考えさせる余裕すら与えてくれないのが、今の俺には逆に有り難かった。

 そんな毎日を送る中で、ふとした瞬間に思うことがある。

――もし、この先もずっと1人だったら

そう思うとゾッとした。先のことを考えれば考えるほどに死にたくなった。

 そんな俺も来月で30歳になる。"三十路"である(今は"アラサー"っていうのかな)

"30歳までに彼女を作って、結婚する"という俺の野望は無残にも散る運命となりそうだ。

 39歳という若さで亡くなった父に後9年で追いつくと思うと考えさせられるものがある。

父の背中はまだまだ遥か遠く、視界に捉えることすらできていない。やはり父という存在は偉大だ。

 私の父は近所でも有名になるほどに怖い人だった。小学生時分の俺もよくグーで思いっきり殴られたものだ。厳しい父だった。例えるなら、"昭和時代の親父"という感じである。ちゃぶ台をひっくり返さないだけまだマシである。

そんな父が今の俺の姿を見たら何と言うだろう。やっぱり怒鳴られるんだろうな。きっと2、3発じゃきかないくらい殴られてるに違いない。その光景を容易に想像することができた。俺は自分の頬をそっと撫でた。

 死ぬ勇気を持てない俺は、よく妄想の中で自殺をする。

妄想の中で首を吊り、手首を切り、車道に飛び出して車に轢かれる。

実際にはそんなことはできない。あくまでも妄想だ。実に空しい妄想である。

 踏切の遮断機が目の前に降りてくる。けたたましく警報音が鳴り響く中、線路の上にもう1人の俺を見つける。その俺が問いかける―

――お前はなんでまだ"そっち"にいるんだ

と。

次の瞬間、電車がもう1人の俺を轢き、見えない轢断遺体だけが線路上に残る。バラバラで、見るも無残である。俺は思わず顔を背けた。

 俺はまだ生きている。生かされている。まだ"あっち"に逝く勇気は持てそうにない。

心のどこかでまだ信じているのかもしれない―

――この先、いつか自分でも想像できないような良い事がきっとある

と。そう、信じたいのかもしれない。

妄想だ。あくまでも妄想だ。想像に過ぎない。

 私は臆病者だ。でも、長い人生を生きていくには少しくらい臆病な方が丁度いいのかもしれない。

 私は今日も生かされている。しかし、いつの日か生きられるようになりたい。少しだけど、今ではそう思うことができる。妄想ではなく、現実としてそう思うことができる。

 父さん、"そっち"で会うことになるのは、もう少し先になりそうです。

父が微笑んでいるような、そんな気がした。



作品元URL:http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5240430

著者:赤鈴

死にたくても死ねない。勇気がない。
そんな臆病者が書いたエッセイです。

俺は生きたい。

ちなみに、筆者はうつ病、自律神経失調症持ちです。
表紙の写真はフリー素材を使用しております。

あなたは人生を生きていますか? 


posted by UGP広報課 at 00:20 | Comment(0) | 自作小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。